韓国、中国人観光客のビザ免除検討　観光・カジノ産業の回復に期待の一方懸念の声も

韓国政府は、2025年の第3四半期（7月〜9月）をめどに、中国からの団体観光客に対して一時的なビザ免除措置を導入する方向で検討を進めています。この政策は、新型コロナウイルスの影響で打撃を受けた観光業を回復させるための施策として位置づけられています。

崔相穆大統領代行は「中国人観光客の訪問を促進することで、観光市場の活性化を図りたい」と述べました。今年韓国はコロナ前の2019年を超える目標となる1850万人の外国人観光客の誘致を目指しており、中国からの団体観光客は達成の重要なカギを握っています。

2024年の訪韓外国人は約1640万人で、そのうちの28％が中国からの観光客。中国は今も韓国にとって最大の訪問者市場であり、このビザ免除措置によってさらに多くの中国人観光客の来訪が期待されています。

この動きは当然、韓国の外国人専用カジノ業界にも好影響を与えるとみられます。韓国には現在、外国人のみが入場可能なカジノが17か所ありますが、コロナ禍では外国人観光客の減少により、これらのカジノは厳しい経営状況に直面していました。観光客の回復が進めば、カジノ業界の業績回復にもつながると見られています。

一方で、一部の韓国市民の間では懸念や反対の声も上がっています。「中国人観光客のマナーや騒音問題」、「特定地域に観光客が集中することで地元住民の生活環境が悪化するのでは」といった不安や、政治的な対中感情の複雑さが背景にあるようです。特に地方都市や観光地では、過去の中国人観光ブーム時にトラブルが相次いだことを記憶している住民も少なくありません。

また、ビザ免除がもたらす経済効果と引き換えに、地域の治安や感染症対策への懸念も根強く、政府の方針に対して慎重な姿勢を求める声も聞かれます。

韓国国内では2024年末に尹錫悦大統領が非常戒厳令を発令したこともあり、経済の先行きに不安が残る中で、観光業の再活性化は国の成長戦略の一部として位置づけられています。

今回のビザ免除措置は「一時的」とされていますが、その効果によっては恒久化が検討される可能性もあります。2030年、大阪にIRが開業すればメインとなる訪問者は中国からの観光客となり、韓国は地理的に最も競合となる国。観光産業やカジノ業界、そして地元社会にとってこの政策がどのような影響をもたらすのか、今後の動きに注目が集まります。

参考元：
在大韓民国日本国大使館　中国人に対するビザ発給要件の緩和
人民網日本語版　韓国が第3四半期に中国人団体観光客対象のビザ免除措置実施へ
Asia Gaming Brief Chinese tour groups to have visa-free entry to South Korea from 3Q25
Inside Asian Gaming South Korea to introduce visa exemption for tour groups from China