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2024年、韓国・仁川にグランドオープンしたばかりの統合型リゾート「インスパイア・エンターテインメント・リゾート」が、わずか1年足らずで売却に出されるというニュースが業界関係者の間で波紋を呼んでいます。
今回の売却報道の大元の背景には、インスパイアの開発を手掛けた米国のモヒガン・ゲーミング&エンターテインメント(Mohegan Gaming & Entertainment)の経営不振があります。
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同社は、開発資金として2021年に2億7,500万ドルの融資を受け、その担保として韓国子会社「MGE Korea Limited」の株式を提供していました。しかし、資金繰りが悪化し、今年2月には米国の大手投資会社ベインキャピタル(Bain Capital)に経営権が譲渡されました。
本件についてベインキャピタルは「資産譲渡プロセスを完了し、市場での公正な評価額を確定するために始めたものである」と説明しています。業界関係者によると、ベインキャピタルは今年初めにMGE Koreaの実質的な管理権を得たものの、完全な法的所有権はまだ確立しておらず、資産の評価や正式な移転手続きが必要で、担保資産の譲渡プロセスを完了するには評価額の確定が含まれていなければならず、公正市場価値を評価するには公開入札が必要でした。
一方で、同社は「入札プロセスで提示された魅力的なオファーがあれば真剣に検討する」とも述べています。通知では本取引について「新築で高級なリゾート施設を、正式なカジノライセンス付きで取得できる貴重な機会」と表現されており、売却が完全な株式売却になるのか、それとも別の形式か、あるいは特定の投資家を対象とするのかについては、ベイン側は明確な詳細を示していません。
なお韓国でカジノライセンスを発行する主管庁である文化体育観光部は、本件に関し「詳細が確認されるまでコメントは差し控える」と述べています。
今回の公開入札によって考えられる今後の行方は以下の2通りです:
もし第三者が経営権を得ることになった場合、カジノライセンスの扱いが不透明になります。文化体育観光部はこのライセンスをインスパイアの韓国法人に発行しており、株式譲渡だけならば再承認は不要としていまが、会社の代表者(CEO)が変更される場合には、ライセンスの再承認が必要になるそうです。
2015年にモヒガン社がカジノ運営ライセンスを取得した際、韓政府側はモヒガンに対して「プロジェクトが公益性を持ち、韓国の文化発展に貢献すること」を求めました。インスパイアは単なるカジノ施設ではなく「K-カルチャーを中心としたグローバル観光拠点」という国家戦略の一部として位置づけられていたからです。そのためインスパイアは、カジノ施設だけでなくアリーナ(コンサート/イベント会場)ほか様々な施設を併設しています。
ベインキャピタルが経営を引き継いだ後も、さらなる投資誘致や拡張計画(テーマパーク、ショッピングモール、ゴルフ場など)を当局に提出しており、もし第三者が経営を引き継ぐことになった場合、これらが継続されるかどうかが問題となる可能性があります。
「ライセンスはインスパイアに発行されたものであり、株主構成が変わっても、特定の投資や施設整備など、契約上の義務は維持される。今後もそれらが順守されているか注視していく」と当局の担当者は述べています。
2024年度の売上はおよそ2,190億ウォン(約1億5,700万ドル)と大規模でしたが、それを上回る1,564億ウォン(約1億1,200万ドル)の営業損失を計上しており、収益性に課題を抱えていたことが明らかになっています。
特に韓国では、カジノの利用が外国人に限られているため、施設規模に対して安定した集客が難しいという構造的な課題があります。インスパイアが苦戦した大きな理由は、仁川空港という戦略的な立地にもかかわらず、特に期待されていた中国からの観光客数が伸び悩んだためとの見解もあります。
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韓国のIR市場は規制が厳しく投資判断が難しいとされる一方で、仁川という好立地と、完成済みの大規模施設を持つインスパイアには、再建・再投資の可能性も秘められています。特に中国、日本、東南アジアの富裕層向けにマーケティングを再構築すれば、アジアにおける戦略的拠点として新たな展開が期待できるかもしれません。インスパイアは先月大阪に日本オフィスを開設しており、一層集客に力を入れていく姿勢を見せています。
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一方で、2030年には当該エリア業界最期のフロンティア「日本」でのIR開業が控えています。京都やユニバーサルスタジオ(USJ)のほか、東京ディズニーリゾート(TDR)、富士山などIR以外の観光資源も豊富な日本は地域の強力なライバルとなることは必至で、そこに韓国市場が立ち向かえるかどうかも鍵となります。
今回のニュースは、インスパイアの将来にとって大きな転機となる可能性があります。海外投資家やアジアのIR運営企業がどのように関心を示すか、今後の動向に注目が集まります。「アジアの統合型リゾート戦争」はまだ終わっていません。むしろ、これからが本当の勝負かもしれません。
インスパイア・エンターテインメント・リゾートは、仁川国際空港に隣接する永宗島に建設された、外国人専用カジノを有する韓国最大規模のIR(統合型リゾート)です。2024年に開業したばかりで、5つ星ホテル3棟(総客室数1,275室)のほか、最大15,000人を収容できる多目的アリーナ、屋内ガラスドーム型のウォーターパークなどの豪華施設を備えています。
参考元:
The Korea Times:Inspire, Korea’s top foreigner-only casino resort, up for sale
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