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2023年、日本で初めてのカジノを含む統合型リゾート(IR)の申請をめぐり、大阪が認定を勝ち取った一方で、長崎は国から「不認定」の判断を下されました。
もはやこれまでかと思われていた長崎でしたが、今また静かに、そして力強く、再起への歩みを踏み出したようです。
日本初のIR第1号として2023年4月に国から認定を受けたのは、大阪市此花区の人工島「夢洲(ゆめしま)」を候補地とする大阪の計画でした。米国の大手IR事業者MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスが出資する「大阪IR株式会社」が中核を担い、国の有識者審査委員会の採点で657.9点(1000点満点・認定基準600点)を獲得。MGMという世界的なIR運営実績を持つ大手事業者との強固なアライアンスと、MICE施設をはじめとする大規模開発の実現可能性が高く評価されました。
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対する長崎は、佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」隣接地を候補地に、カジノオーストリアインターナショナルジャパン(CAIJ)を中核グループとして申請。大阪と同時期に審査が始まったものの長崎は「継続審査」となり、最終的には「不認定」が言い渡されました。
不認定の理由として国の審査委員会が指摘した主な問題点は、大きく2つです。ひとつは資金調達の確実性の欠如。審査の途中で出資・融資予定者が大幅に変更されたにもかかわらず、それを裏付ける確約書やコミットメントレターの整備が極めて不十分でした。もうひとつは事業運営能力と依存症対策への懸念。参画事業者の中にIR経営経験を持つ企業が少なく、長期的な実行可能性に疑問が呈されたほか、ギャンブル依存症などの有害影響への対処策も不十分とされました。
こうして、長崎県は一度はIR誘致を断念せざるを得ない状況に追い込まれました。
しかし、諦めなかった人たちがいました。長崎県大村市と大村商工会議所です。
2026年5月21日、両者は新たなIR誘致に向けた協議会「大村湾グリーンIR誘致検討協議会」を共同で設立することに合意。2026年8月頃の正式発足を目指し、地元の民間企業やIR関連事業者を中心に組織を立ち上げます。大村市長の園田裕史氏が協議会の顧問に就任することも決まっており、行政と経済界が一体となった強力な推進体制が動き始めています。
この動きの背景には、全国的なIR再検討の機運の高まりもあります。愛知県(中部国際空港島へのカジノ誘致再検討)や北海道(苫小牧市・函館市での再議論)など、第2ラウンドへの動きが各地で活発化しており、長崎でも「今こそ再挑戦のタイミングだ」という声が上がりました。大村商工会議所の中村人久会頭らは、これまでの誘致活動で培ったノウハウを活かし、大村湾周辺を新たなポテンシャルエリアとして位置づける方針を固めています。

大村市は、長崎空港が所在する交通の要衝です。西九州新幹線の新大村駅開業によって広域アクセス性がさらに向上し、長崎市からも車で約30分という好立地にあります。海と空のダブルアクセスを持つこの場所は、国内外の観光客を広域から受け入れるゲートウェイとして大きな可能性を秘めています。
実は、大村湾とIRの縁は以前からありました。かつて長崎県のIR事業者選定に参加したOshidori International Development(オシドリ)は、大村湾に揺れる船の帆をイメージした「大村湾の帆」と名付けられたランドマーク建築や、15,000席の大規模アリーナを提案していたのです。採用はされませんでしたが、大村湾の景観を活かしたIR開発の可能性を世に示しました。
今回目指す「大村湾グリーンIR」は、こうした過去の構想を継承しながら、単一のテーマパーク隣接地にとどまらず、大村湾全体をネットワーク化する広域リゾートの構築を目指しています。ハウステンボス(佐世保市)とのシナジーを活かしつつ、大村港や早岐港を起点とした湾内周遊観光船の拡充なども視野に入れています。

「大村湾グリーンIR」構想が前回の長崎の失敗と一線を画す点は、地元主体で弱点を徹底的に分析し、大村ならではの強みを掛け合わせたことにあります。
カジノを含むIRに対しては、ギャンブル依存症や治安悪化への懸念から各地で反対運動が起こります。しかし大村市は「ボートレース大村(大村競艇)」という公営ギャンブルとの長年の共生の歴史があります。
ボートレースの収益は学校給食費・保育料の無償化や市民へのクーポン配布など、直接市民生活に還元されてきました。中村会頭が「カジノに対する心理的障壁が他地域より低い」と強調するのは、こうした理由から「適切な管理のもとでゲーミング事業の収益が福祉向上につながる」という実感が市民の間に根づいている点があります。
前回の致命的な弱点だった「資金調達の不確実性」を克服するため、大村商工会議所の理財部会(部会長:十八親和銀行大村支店長・森田健資氏)が主導し、2025年2月には韓国のIR施設「パラダイスシティ」「インスパイア」などを視察する研修を実施。地元の有力地方銀行が中心となって財務・ビジネスモデルを直接検証した事実は、地元経済界が資金面から本気で関与しようとする意志の表れです。セガサミー等のIR運営企業との関係構築も、今後の資金調達コミットメントにつながることが期待されています。
「グリーンIR」という名称には、大村湾の豊かな自然環境を守りながら持続可能な観光開発を行うという明確な意志が込められています。大村市長の園田氏は「大村湾をきれいにする会」の会長を務め、「ゼロカーボンシティ大村」(2050年CO₂排出実質ゼロ)を市政の柱に掲げています。大村湾周辺には絶景の「大村湾グリーンロード」や日本唯一の海を見下ろす茶畑、サイクリングイベント(大村湾ZEKKEIライド)などグリーン・ツーリズムの資源が豊富に揃っており、2026年5月からはJR九州が大村線でバイオ燃料(HVO)を使った実証走行も始まりました。移動から観光コンテンツ、施設開発まで「環境配慮型」のストーリーを一貫させることで、ESGを重視する国際投資家や富裕層インバウンドを引き寄せる戦略です。
大村湾グリーンIR誘致検討協議会は、2026年8月の正式発足後、具体的な配置案・事業スキーム・環境負荷低減プログラムの策定に着手し、年内に長崎県知事・県政府へ正式提案を行うスケジュールを描いています。
ただし、課題も残ります。最大のハードルは、前回IR不認定を受けた際に県議会で公式に陳謝した大石賢吾知事をはじめ、県政府側に根強い慎重論があることです。協議会顧問を務める園田市長を通じた政治的アプローチと、県民世論の再喚起が欠かせません。また、ハウステンボスをはじめとする近隣観光地との広域シナジーをどう設計するかも、計画の説得力を大きく左右します。
日本のIR第二幕が幕を開けるとき、長崎がその主役のひとつとなれるか。大村商工会議所と大村市が手を組んだ「大村湾グリーンIR」構想は、資金調達の透明化・環境ブランドの確立・高い市民受容性という3つの強みを武器に、前回の失敗を乗り越えようとしています。長崎の「諦めない再挑戦」がどんな結果をもたらすのか、今後の動向に注目です。
先日は「見込みレベル星ひとつ」にランクしてすみませんでした。頑張ってください。

参考元:
大村商工会議所提供資料:大村湾グリーンIR誘致検討協議会設立合意に関する資料(2026年5月)
国土交通省・観光庁:IR整備計画の審査結果(2023年4月・12月)
西日本新聞:IR誘致の協議会設立へ 長崎の大村商議所 市長が顧問に就任
長崎新聞:IRの長崎県への再誘致を検討へ…大村商工会議所が協議会、園田市長が顧問に
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