MENU

03-4500-2225
営業時間:10:00~19:00(平日)

03-4500-2225
営業時間:10:00~19:00(平日)

ステーキングの新しい形?『ICMバイイングファンド』の挑戦

ICMバイイングファンド

アメリカで、ポーカープレイヤーへの出資の新しい形態を試みる挑戦を始めた方がいます。

先日のWSOP2025から挑戦を始めたこの新ファンドの形と今後の課題について、ご本人の手記を基にご紹介します。

目次

ICMバイイングファンドとは

従来のステーキングはトーナメント開始前に行うのが一般的ですが、米在住のデレク・ウォルターズ氏が起案したのは、トーナメントの進行中、特に決勝テーブル進出が現実味を帯びてきた段階でプレイヤーのチップスタックのICM(Independent Chip Model)価値に基づいて出資を行うという新しいアプローチ。強い選手を額面通りに購入したり、そこまでではないプレイヤーならICMの価値より割り引いて購入することによってプラスの期待値を得るというものです。

チップとドル札

プレイヤーはスタック全体の価値の一部を実現し、投資家は手に汗握りつつの楽しい時間をプラスの期待値(+EV)で過ごすことができる、というスキームです。

ウォルターズ氏は2025年度WSOPでの始動に向け、目標通り資金100万ドルを調達。アメリカ以外にもイギリスやヨーロッパ各地から多様な出資者を集めることに成功し、その多くは資金提供にとどまらず、選手のスキルに関する貴重な洞察を共有したり、有望な選手を教えてくれたり、有力選手との接触をサポートしてくれたそうです。ファンドはオーバーサブスクリプションとなり、一部お断りする事態も発生したことで、ウォルターズ氏はこのファンドモデルの強さに対する自信をさらに深めます。

プレイヤーの評価判定

player-evaluation

いざ初戦場となるWSOPメインイベントへ。現地入りしてからのウォルターズ氏の重要な仕事は、プレイヤーの選手たちを詳細に評価すること。

ICMは、アクションの公正な価格を決定するための出発点に過ぎません。それは貴重な基準ですが、選手のスキル、フィールド全体の強さ、テーブルの強さ、ポジション、チップスタックの位置なども同じくらい重要です。

ウォルターズ氏自身はプレイヤーのエッジを推定するアルゴリズムは持っていないため、主な情報源はThe Hendon Mob(各プレイヤーがキャッシュしたライブトーナメントの記録を表示しているサイト)を使用し、自身が知らないプレイヤーについてはそのプレイヤーの出身地の知り合いに連絡を取り、できる限りの情報を集めるのだそうです。

プレイヤーたちとの接触・交渉

ポーカープレイヤー

トーナメントに残っている各選手のROI見積と基準が定ったら、プレイヤーとの交渉です。直接連絡を取るか、共通の友人から紹介をもらって接触を試みますが、これが簡単にはいかないのです。

WSOPのメインイベントは、連日かつ長時間に渡るマラソンのような競技。プレイヤーはテーブルから離れるわずかな時間の中で、疲労回復や他プレイヤーとの交流やその他諸用を済ませなければなりません。プレイヤーのルーティンを邪魔したり、ゲームから気を散らせたりすることは絶対に避けたいもの。プライバシーや時間を尊重しつつオファーを出す機会を伺うのはなかなかに困難なことでした。

それでもなんとか最終的に3人のプレイヤーから合計75,000ドル分の取引に成功、そのうち2名はDay6に、1名がDay7に売ってくれたそうです。しかしDay8以降は取引成立へと辿り着くことができませんでした。

以下はDay6に成立した取引のうちのひとつの顛末です。

知人からこのファンドのことを聞いたプレイヤー(DAY5時点で残り522人のうち46位、ICM227,000ドル)から興味がある旨をXのDMでもらう

ICMに基づき22,750ドルで10%を購入するオファーをしたが、その日は売らずにプレイ継続を選択し取引不成立

順当に勝ち残り、DAY6進出時点でICM315,000ドル。再度同じオファー(10%を31,500ドル)をし、取引成立

Day6開始5時間後に113位でフィニッシュ、賞金70,000ドルを獲得/ファンドは7,000ドルを受け取り24,500ドルの損失

トーナメント終了後の考察

チップの間で考える人の後ろ姿

ウォルターズ氏は今回の試みについて『100万ドルのうち、75,000ドル(7.5%)しか投資できなかったこと、特にDay8には30万ドルから50ドル規模の取引の機会があると期待していたのに実現しなかったことについては残念だった』と振り返ります。

加えて、「この取引は選手と投資家双方にwin-winであると信じているが、現実的には非常に小さな市場であり、いくつかの課題がある」とウォルターズ氏は綴っています。

・認知度の低さ
ファンドも自分自身もプレイヤーに認知されていないいなかったため、トーナメントの最中に知らされたところで知らない人からの交渉提供に応じる人は少ない。

・トナメ開始前のスワッピング等
多くのプレイヤーはトーナメント開始前になんらかの形ですでに一部を売ったり交換しているためさらに売ることに気が進まない。

・気持ちの問題
5日以上連続で残り続けたプレイヤーは、リスクヘッジで士気を落とすより己の可能性に賭ける傾向が強まる。

以上を踏まえても、今回の3名と取引できたことは非常に嬉しく思っている。今回の投資はマイナスとなってしまったけど、長期的に見ればプラスになるものだったと確信しているし、取引してくれたプレイヤー全員が売ってよかったと思っているはずだ。本件を通してポーカーコミュニティから寄せられた多くの関心やサポートを誇りに思うし、新業態の初動として未来の市場に大きな価値を寄与すると信じている

ウォルターズ氏はそう語った上で、現在この事業への投資を続けるべきかどうかを検討している最中だそうです。

—-

非常に興味深い手記でした。
X(旧Twitter)では、「これはプレイヤーにとってゲームチェンジャーとなり得るものでは」と引用する人もあり、今後が非常に気になるところであります。

出典:
Trip Report – WSOP Main Event ICM Buying Fund : Details from my time buying action in Vegas, plus notes on the future of the market 
-DEREK WOLTERS

あわせて読みたい

  • URLをコピーしました!
目次