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次のIRカジノは北海道が有力?先行活動が最も盛んな北の大地の気になる動向

北海道IRサムネ

北海道は、IR(カジノ統合型リゾート)について2019年に取りまとめた「IRに関する基本的な考え方」について、改訂案を道議会で報告し、あらためて前向きな検討を続ける姿勢を見せています。

大阪・夢洲の「MGM大阪」が日本初のIRとして2030年末の開業を目指し工事を進める一方で、業界関係者や自治体は早くも「次のライセンスはどこか」に関心を寄せる中、最も早くかつ具体的な動きを見せている「北海道」。過去一度はIR誘致を断念した北海道ですが、2025年に入ってから道庁・道議会・道内自治体が立て続けに動きを見せています。

目次

北海道の「IRに関する基本的な考え方」の改訂と道議会の行方

北海道は2019年4月に取りまとめた「IRに関する基本的な考え方」において、IR導入の意義として「北海道観光のレベルアップ、インバウンドと国内観光需要の拡大、季節・地域偏在の是正、良質な雇用創出」などを掲げ、年間最大約1,560億円の売上や2,000億円規模の経済波及効果が見込まれると試算していました。

出典:IR(統合型リゾート)に関する基本的な考え方(H31.4 北海道)

道はこの「基本的な考え方」の改訂に向けて動き出しており、道議会へ新たに提案した素案ではIRの導入目的、施設の機能と規模、優先候補地の考え方、ギャンブル依存など社会的影響への対策という四つの柱が盛り込まれているそうです。

苫小牧を軸にした「ダブルポート」構想

具体的な候補地として最も名前が挙がっているのが苫小牧市。「基本的な考え方」でも、交通利便性や需要予測の結果などから「苫小牧市の候補地を優先することが妥当」と明記されており、優先候補地として位置づけられてきました。苫小牧は、誘致活動第一ラウンドでも「ハードロック・ジャパン」がかなり本格的な準備を進めていた経緯があります。

苫小牧は北海道の中でも産業港湾都市として発展してきた地域で、国際港を有し、道内物流のハブとしての機能を担っています。近年は半導体関連を含む新産業の集積も進みつつあり、IRが整備されれば、観光と産業を掛け合わせた新たな成長エンジンになるとの期待が示されています。

出典:北海道苫小牧国際リゾート構想・IR誘致に向けた 取組状況について(令和4年2月 苫小牧市)

さらに大きな強みが、新千歳空港との近接性です。IR候補地とされるエリアは、新千歳空港からアクセス道路で10分の圏内にあり、千歳市も道のアンケートに対し「道内でIRを設けるのであれば新千歳空港周辺が望ましい」という回答をしています。さらには、仙台や名古屋からのフェリーが発着する苫小牧港からも車で30分と、航空と港湾の双方を活かした「ダブルポート(新千歳空港、苫小牧港)」のポテンシャルを持ちます。

釧路・白老など周辺地域の思惑と「広域周遊」のシナリオ

今回の動きで特徴的なのは、苫小牧単独ではなく、周辺自治体との協力体制が見え始めている点です。

釧路市はかつて自らも候補地として名を挙げており、当時は「富裕層を対象とした欧州型の長期滞在型IR」をモデルに掲げ、阿寒湖温泉での整備を目指していました。しかし今回のアンケートでは「苫小牧案」を支持、IRが整備されるなら、そこから釧路湿原や港町としての魅力を活かした観光周遊ルートを組み立てたい意向を示しています。釧路は日本最大の湿原を擁し、タンチョウヅル観察や海産物など観光資源が豊富な地域で、IRを玄関口とした「道東周遊」の中核になり得ます。

苫小牧の南西に位置する白老町も、湖や温泉、そしてアイヌ民族の文化を伝える国立の民族共生象徴空間(ウポポイ)など、多様な観光コンテンツを持つ地域。IRを訪れる国内外のゲストを白老に送客することで、北海道独自の文化体験を提供するシナリオが描かれています。

もともと北海道が「基本的な考え方」で掲げていたコンセプトの一つに、IRを拠点に道内各地への広域周遊を促進するという方針がありました。今回、苫小牧・千歳・釧路・白老といった複数自治体がそれぞれの役割を描き始めたことで、この「IRをハブとした全道周遊」というビジョンが、具体性を増しつつあるようです。

北海道がIR議論を再加速させた背景

北海道のIR計画は過去に「いったん棚上げ」となった経緯があります。2019年、苫小牧市を優先候補地とする構想を検討しながらも、環境への懸念や道議会内の賛否の割れもあり、鈴木知事は環境影響評価が申請スケジュールに合わないことなどを理由に応募断念を決断しました。

しかしその後も、道経済界を中心に「IRは長期的成長のドライバーになり得る」という声は根強く、道庁もIR関連の調査や情報発信自体は継続してきました。今年8月には道内179市町村すべてを対象にIRに関するアンケート調査を実施し、自治体側の意向や懸念を改めて洗い出しています。

国側でも、IR推進に前向きな高市早苗首相が就任し、IR推進を観光政策の重要な柱の一つとして位置づけるよう指示するなど「第二ラウンド」に向けた公募の準備が進んでおり、この国策上の追い風もまた北海道側の再始動を後押ししているといった構図です。

道民世論とリスク議論は依然高いハードルに

一方で、道内全ての自治体が前向きというわけではありません。函館市は、道が実施した意向調査に対しては「関心あり」と回答したものの、その後の記者会見で市長が「現時点ではIR誘致を進める立場にはない」と述べ、当面は情報収集にとどめる姿勢を示しました。幕別町や東神楽町ほか98市町村はギャンブル依存症などの社会的リスクを理由に「関心なし」の回答を寄せています。

過去の世論調査では、環境への影響ギャンブル依存症への懸念から、道民の間で反対意見が多数を占めた時期もありました。道議会でも賛否が分かれ、2019年の断念の直接的な要因の一つになっています。

今回、道が議会に提示しようとしている新たな「基本姿勢」は、ギャンブル依存などの社会的な弊害への対策も柱の一つとして位置づけています。カジノ管理委員会の枠組みや、入場回数制限、自己排除制度、相談支援体制など、国の制度を前提としつつ、道独自にどこまで踏み込んだ対策を打ち出せるかが、道民の理解を得るうえで重要なポイントになります。

また、自然環境が最大のブランド資産である北海道にとって、環境影響評価への姿勢も引き続き問われます。前回は「環境アセスに必要な時間を十分に確保できない」という理由で断念した経緯があるため、今回はその反省をどう生かし、科学的な検証と開発スケジュールの両立を図るのかが注目されます。

国のIR政策と「第二ラウンド」の争点

現在認定されているIR区域は大阪府・市のみで、MGMリゾーツとオリックスを中核とするコンソーシアムが約1兆5,100億円を投じて夢洲IRを建設中です。開業は2030年末が予定されており、日本型IRの「ショーケース」として世界から注目されています。

政府は最大三カ所までIR区域を認定できる枠組みを維持しており、残る二つの枠をめぐって、北海道のほか和歌山、愛知、長崎、神奈川などが名乗りを上げる可能性が報じられています。

高市政権は観光とIRを経済成長戦略の一部として位置づけており、新任の観光担当大臣に対してIR推進を含む観光戦略の強化を指示したと伝えられています。ただその一方で、国際情勢や国内世論の変化によっては、公募時期や認定プロセスが遅れるリスクもあります。各候補地は、国のタイムラインに振り回されないよう、シナリオ別の準備と住民合意形成を進めておく必要があります。

「次は北海道か?」現時点での展望

「次のIRは北海道で決まりか」と問われると、現時点での見立てではまだまだなんとも言えないというところ。

まず、第一ラウンドで有力候補だった長崎が不認可だった前例が懸念として立ちはだかります。たとえ誘致に最後まで前向きであっても、計画が絵に描いた餅では国の認定がおりないという厳しい事実が改めて示されたからです。意欲だけではない、具体的な実現性と国に対する説明責任が極めて重要な上に、東京や神奈川のような好立地の自治体が強力な事業者と組んで本格的に名乗りを上げれば、どうしても競争は厳しくなります。

そこに道議会と道民世論の賛否の振れ幅、前回断念の要因となった環境アセスの時間軸、事業者の資金調達環境など多くの条件が絡み合い、決してハードルは低くないでしょう。

一方プラス要因として、どの自治体よりもいち早く具体的に動き始めていることがあります。すでに道が公式にIR政策を再起動させ「基本的な考え方」の改訂作業に入っており、苫小牧と周辺自治体が連携しながら具体的なプランを描き始めています。そのビジョンは、大阪にはない「大自然との融合型」という、新しいタイプのリゾートとなりうるポテンシャル。北海道が第二ラウンドで国から認定を得ることができれば「自然・食・文化・産業が凝縮された北海道らしいIR」となり、都市型の大阪IRとは全く違う属性の顧客を呼び込める可能性は大いにあります。

IRを単なるカジノ施設ではなく、北海道全体の観光と産業を底上げするプラットフォームとして設計し、その実現性を担保できるかどうか── それができれば、道内だけで大きな経済効果を生む一大商圏を築き上げることができる可能性があるでしょう。

参考元:
北海道公式HP:経済部 観光局観光振興課 統合型リゾート(IR)
苫小牧市公式HP:北海道苫小牧国際リゾート構想・IR誘致に向けた取組状況について
北海道新聞:釧路市、IR整備「関心がある」 道の市町村意向調査
ハードロック・ジャパン:統合型リゾート(IR)について
読売新聞
:IR誘致函館も関心 釧路市苫小牧に協力姿勢 
:北海道内IR整備、関心自治体3割がギャンブル依存など「懸念」…49市町村が産業新興などに関心
日本経済新聞
:北海道、IRの「基本的な考え方」を改定へ 有識者懇談会も設置
:北海道、再燃するIR誘致機運 勉強会や意向調査続々
:IR誘致で利点訴え、北海道内3候補地

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