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大阪IR開業で岐路に立つ韓国カジノ「江原ランド」グローバル化と地元経済の間で揺れる自国民向けカジノ運営独占権

江原ランドが韓国民利用カジノ運営独占権喪失か?

韓国・江原道の高原に位置するカジノ「江原ランド」が、長年独占してきた「韓国国内居住者向けカジノ運営権」を巡る岐路に立たされています。

現状、韓国に存在するカジノで国民の利用が利用が許可されているのはこの「江原ランド」のみで、ソウルや釜山、済州島にある他のカジノはすべて外国人専用カジノ。しかし今後のアジア域内の統合型リゾート(IR)競争を踏まえると、「外国人専用カジノへ国内プレーヤー利用ライセンスを付与する移行は不可欠」と、多くの専門家が声を上げています。

目次

江原ランドとは – その独自の背景

鉱山

韓国にはカジノが複数存在するにも関わらず、国民が利用できるカジノはこの「江原ランド一箇所だけ」という特異な制度が存在します。

江原ランドは「廃鉱地域開発支援特別法」に基づき、旧炭鉱・鉱山地域であった江原道旌善郡に2000年10月開業しました。首都ソウルから車で3時間と、とても好アクセスとは言えないこの立地には、「鉱山の閉鎖によって急速に経済が衰退した地域再生」という背景があり、地方振興政策との連動が強く打ち出されてきました。

つまり、単なるカジノ・観光施設ではなく、「地域活性化」「鉱山跡地再生」の役割を持つリゾート開発だったのです。

この独特な制度の下、江原ランドは国民がカジノゲームをプレイできる唯一の施設として、韓国のカジノ市場において圧倒的な地位を築いてきました。ギャンブル依存症への対策として住民登録番号による入場規制があり、1ヶ月のうちに利用できる日数の上限も設けられていますが、それでも実に韓国のカジノ部門の売上の約40%以上をこの施設が占めているというデータもあります。

つまり、国内居住者向け独占という制度は、江原ランドにとって強力なビジネス基盤であると同時に、地域経済にとっても重要な収益源となっており、地元住民が「この独占が廃止される」という議論に反対を示してきたという報道があります。

日本はじめ周辺地域IRの脅威

大阪の風景

しかしながら、ここにきて「独占の維持は将来的に無理がある」という声が増えています。

その最大の背景が、日本の大阪にて開業予定のIR(カジノ統合型リゾート)

日本で予定されているIRには、国内居住者の入場禁止規定がありません。一応、日本国民のみ入場に際し6000円の入場料が課される予定はありますが、それでも韓国まで赴く旅費よりはずっと安い。これまで韓国に出向いていた日本人プレイヤー達はわざわざ海外まで足を運ぶ必要がなくなり、韓国のカジノ産業全体が重要顧客を一部失うことになる可能性が高いというわけです。

その上さらに、これまで江原に来ていた韓国人カジノプレイヤーが日本へ流れる可能性もあります。ソウルから大阪へのフライトはわずか2時間弱。さらに大阪にはUSJなど江原にはない他の観光施設もある。一部の顧客がそちらへ流れることは十分考え得るでしょう。

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他のカジノも自国民を受け入れるべき?

カジノディーラーの写真

このような環境変化を前に、韓国では専門家たちが「外国人専用カジノに対して、国内プレーヤーを受け入れる条件付きライセンスを段階的に付与する移行が必要だ」という意見を述べています。

韓国内の他の「外国人専用カジノ」に自国民も一定条件で参加できるようにすれば、江原ランドの独占構造を少しずつ緩和しながら、韓国内のカジノ・IR機能を拡張できる。専門家がこうした段階的移行を「長期的には不可欠」と語る理由は、さもなくば日本のみならずアジア域内でのIR競争の中で遅れを取る可能性すらあるから、と見ているようです。

制度変更は地域経済への打撃

江原道

しかし、制度変更には明確なハードルもあります。

まず、江原ランドが地元地域経済を支えてきたという構造。廃鉱地域における振興政策として設立された江原ランドは、特別法第11条により、カジノ収益の最大13%を「廃鉱地域基金」に拠出する仕組みを持っています。

「国内プレーヤー独占」というビジネスモデルが地域振興と密接にリンクしていることで地元住民の理解を得ながら運営されてきた経緯から、制度変更には地域住民・地方政府との調整が不可欠であり、容易ではありません。

別の打開策:リゾート拡張計画

江原ランドは、こうした懸念に備え、競争力ある統合型リゾート(IR)として転換するためのプロジェクト「K-HIT 1.0」を施策として据えています。計画自体は2023年に発表され、2032年をひとつの節目とした中長期展開を前提としています。

この計画では、カジノ空間の拡張と施設改修のみならず、ホテル、スキー/ゴルフ等のアクティビティウェルネス施設レストランや物販など非ゲーミング部門の収益強化など多様な展開を検討しています。単なるギャンブル施設ではなく、ウェルネス、スポーツ、自然・アウトドア体験など“滞在型リゾート”としての価値を高めるという方向性が強く出ています。

同時に、高原・旧鉱山地帯という立地のハンディを補うための交通アクセス改善や、施設間の回遊導線改善も検討しています。

江陵原州大学観光学科のイ教授は「K-Hit 1.0計画が同リゾートにより広い使命を与えることで、韓国全体の観光市場を活性化する助けになるだろう」と語っており、また韓国ゲーミング観光専門家協会のアン会長も「この計画によって地元地域はカジノ収入への依存を減らし、他の観光商品を展開することで自立を強めることができるはずだ」と述べています。

本当にこの計画は十分なのか

江原ランドのリニューアルは他にも「外国人専用エリアのベッティング・リミット引き上げ」や「国外旅行代理店への誘致インセンティブ導入」などインバウンド(外国人観光客)誘致強化を目論んでいます。従来の「カジノ好きの韓国人をひとところで受け入れる器」というイメージから脱却し、国際型リゾートへ転換、特にアジア域内からの訪問客を大幅に増やす戦略に手を伸ばしているというわけです。

しかし、「大阪IR時代にこれだけで立ち向かうのは厳しい」というのが専門家および事業者たちの共通認識のようです。

大阪IRが持つ交通アクセス、プロモーション力、国際ブランド力などは、江原ランドのみならず韓国カジノ業界全般にとって大きな脅威となり得るもの。新幹線ひとつで東京にも富士山にも行ける、足を伸ばせばディズニーリゾートもある、という観光資源豊かな日本なら、たった一つのIRだけでも集客規模・スケールで差が出る可能性があります。8月に大阪で行われたフォーラムにおいて、江原ランドのチェ代表代行は「地理的にも大阪IRは我々にとって脅威」と述べ、韓国観光学会のソ会長も「既存制度だけにとどまらない新たな政策が必要だ」と訴えています。

さらには日本だけでなく、マカオ、シンガポール、東南アジア各国などアジア地域全体での統合型リゾート開発も依然脅威です。日本のIR開業よって地域の競争はさらに激化するのは自明の理でしょう。

ラスト・フロンティアとよばれた日本におけるIR開業でアジアのIR市場競争が激化する中で、江原ランドが従来通りの国内居住者向け独占モデルにとどまることは、将来的に抱えるジレンマを拭いきれない。だからこそ、江原ランドのみならず、韓国カジノ業界全体で対抗策を講じていく他ないというのが専門家の認識のようです。

参考元:
GGRAsia:Kangwon Land to triple casino space in US$1.85 bln revamp
:Design of second casino building, slated for early 2028 opening, revealed by Kangwon Land Inc
Korea JoongAng Daily:Kangwon Land unveils wellness hub as health tourism radiates growth
The Korea Times:High1 Resort emerges as hot spot for MICE events
AGBrief:South Korea’s Kangwon Land adjusts strategy to a global integrated resort
GGBNews:Growth at South Korea’s Kangwon Land stunted by strict regulation

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