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GTOツールとして多くのポーカープレイヤーに活用されているGTO Wizardが、一部マルチウェイ対応になったことを発表しました。
2025年8月6日時点の発表では、マルチウェイに対応しているのはエリートプランのみで、ポストフロップのChip EVおよびレーキあり3人用ソリューションのみを提供しており、ダイナミック/オートマチックサイジングは非対応。ICM、プリフロップ、ダイナミック/オートマチックサイジングには現在取り組んでおり、近い将来のリリースを予定しているとのことです。
今回のリリースにあたって、GTO解析におけるマルチウェイの精度と課題、今後の展望について、以下GTO Wizard公式が公開したコラムの内容を紹介します。
「エクスプロイトされないプレー」を最適戦略とする近代ポーカーにおいては、ナッシュ均衡(Nash Equilibrium)をベースとしたゲーム理論最適(GTO)戦略が主流となりつつあります。2人ゼロサムゲームにおいてこのナッシュ均衡は理想的で、お互いの戦略が最適応答となりどちらも搾取されず、かつ防御保証が得られます。
しかし、プレイヤーが3人以上いる場合では事情が根本的に変わります。理論的にはどんな人数のゲームにも少なくとも1つのナッシュ均衡が存在しますが、ゲームツリー(取り得るすべての選択肢)の分岐も桁違いに大きく非常に複雑なマルチウェイでの均衡とは、他プレイヤーの現在の戦略に対して最適応答をしているだけで、2人ゼロサムのような防御保証はありません。3人ゲームで、他の2人が意図的にでなくとも協調的に戦略を変えれば、最適応答をしているプレイヤーもエクスプロイトされ得ます。
以下に、簡易ポーカーのゲームを使ってその理論を例示してみましょう。
マルチウェイだと、理論上EVを他プレイヤーに移し得る現象の説明として、簡略ポーカーとして知られる「AKQゲーム」に「J」を加えて3人版にしてみます。
カードは「A・K・Q・J」の4枚のみで、3人にそれぞれ1枚ずつ配られます。コミュニティカードはありません。全員がアンティ1を払い、残りのスタック1でオールインするかどうかを1ラウンドで決めます。
2人で行うAKQゲームと違い、3人版の均衡では「プレイヤー1に自由度がない一方で、プレイヤー2・プレイヤー3はある範囲で戦略を変えても自分のEVを保てるという状況」が発生します。プレイヤー2がブラフ頻度を自由に選べるとき、その値次第でプレイヤー1とプレイヤー3のEV配分を変えられます。つまり原理的にプレイヤー2が、プレイヤー1と3のどちらを得させるかを自分が損しない範囲で調整できるということになります。これは共謀がない状況でも発生します。
<例>
プレイヤー1からチェックで回ってきたとき、プレイヤー2が常にチェックする(=絶対にブラフしない)とします。
プレイヤー2が絶対にブラフしないので、プレイヤー3はプレイヤー2からエクスプロイトされる心配がなくなります。
そのあとにまたアクションが回ってくるプレイヤー1は、プレイヤー3のブラフとバリューに常にさらされる一方、プレイヤー2がプレイヤー3をけん制してくれることが全くないため、プレイヤー1のEVがプレイヤー3に移ります。
この単純化されたAKQJ設定では、プレイヤー2は自らベットしなくても自分のショーダウンバリューで得られるEVが同じになるように構造が設計されます。
それでもGTO WizardのAIは、均衡に近いQRE(Quantal Response Equilibrium / 現実のプレイヤーはGTO通りにプレイしないことを前提として最適応答を計算する次世代アプローチ。エリートプランのみ対応)を近似計算し、それを最適戦略とします。実践例に当てはめてその理由を掘り下げてみましょう。
UTGレイズにBTNとBBがコールして3ウェイポットになり、全員がリバーまでチェックダウンするとします。均衡ではリバーでチェックが回ってきたUTGは28.6%の頻度でベットしますが、それを常にゼロ(ベットしない)とします。理論上UTGは、自分のEVを保ったままBBのEVをBTNへ移せることになりますね。
しかし実践では、BBのEVがBTNに移るのではなく単にUTGがEVを失うだけでした。しかもレーキがあるため、EV変化の合計はゼロになりません。
これが、実践ではEVの移転は非常に起こりにくいため実質ないものと見なし、均衡をを目指すことは依然として堅実な戦略だと考える理由です。複雑なスポットでは順当なプレイをすることのほうが重要で、簡易ゲームで起こり得るような理論上のEV移動について考えるのは実践的ではないからです。
以上が、公式の発表によるマルチウェイ対応の背景となります。
要約すると
という感じです。
GTO Wizardは今回の3人用ソリューションのリリースを、「あらゆる人数のマルチウェイ・ホールデムに対応する普遍的ソルバーへの重要な一歩」と位置付け、精度向上に向け日々開発を続けており、さらなる機能追加を予定していると発表しています。
参考元:GTO Wizard公式blog
Quirks of Nash Equilibrium in Multiway
GTO Wizard AI 3-way Benchmarks
Introducing QRE: The Next Evolution of GTO Solving
GTOの次なる進化:QRE(質的応答均衡)
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